西新宿セルフライフ内科クリニック

高血圧

高血圧とは

高血圧とは、心臓から送り出される血液が血管の壁を押す「圧力」が、正常な範囲を超えて常に高い状態にあることを指します。

この数値が高いということは、血液の通り道である血管に対して、24時間休むことなく過度な負担がかかり続けていることを意味しています。

心臓は血液を全身に届けるためのポンプとして、1分間に約60回から80回、1日に換算すると約10万回もの拍動を休まず繰り返しています。

血圧が高いまま放置されている状態では、この10万回に及ぶ拍動の一つひとつが、血管の内側の壁を強く叩きつける「物理的な衝撃」となって蓄積されていきます。

血管の最も内側には、血液をスムーズに流すための非常に繊細なバリア機能を持つ細胞がありますが、高い圧力がかかり続けることでこのバリアがミクロ単位で傷つき、壁の表面が荒れてボロボロになってしまいます。

さらに、この傷ついた箇所には血液中のコレステロールなどの脂質が入り込みやすくなり、血管の壁の中にコブのような盛り上がりを作ります。

これにより血管の通り道がさらに狭くなるため、身体は狭い場所へ血液を流そうとして、より一層強い力でポンプを動かすようになり、血圧がさらに上昇するという悪循環に陥ります。

このように、痛みなどの自覚症状が全くないまま、全身の血管が1日に10万回、1年で約3,600万回もの激しい打撃を受け続けることが、血管の柔軟性を奪い、組織を根本から破壊していく大きな原因となるのです。

高血圧の原因

・血液量の増加と塩分の関係

血圧を押し上げる大きな要因の一つは、血管内を流れる血液の総量が増えることです。

これには体内のナトリウム(塩分)濃度を調節する仕組みが深く関わっています。

身体には血液中の塩分濃度を常に一定に保つ機能がありますが、塩分を過剰に摂取すると、その濃度を薄めるために体内の組織液が血管内へと取り込まれます。

その結果、循環する血液の絶対量が増加し、血管の壁に対して内側から加わる圧力が高まります。

これが、食生活における塩分の摂りすぎが血圧を上昇させる直接的な原因です。

・血管の収縮による抵抗の増大

血液の通り道である血管の広さが小さくなることも、血圧を上げる主要な原因です。

本来、血管の広さは自律神経によって適切に制御されていますが、加齢による血管の柔軟性の低下、精神的ストレスによる交感神経の過緊張、あるいは煙草に含まれる成分などは、血管を強く収縮させる作用を持っています。

通り道が狭くなれば、そこを通過する血液の抵抗が増大するため、同じ量の血液を流し続けるためには、より高い圧力で押し出さなければならなくなり、血圧が上昇します。

・肥満による代謝と心拍出量への影響

肥満は、ホルモンバランスの変化と心臓への負荷という二つの側面から血圧に影響を及ぼします。

① 脂肪組織から出る物質の影響

脂肪は単なるエネルギーの蓄えだと思われがちですが、実はさまざまな物質を分泌する役割も持っています。

体重が増えて脂肪組織が過剰になると、血圧を上げる原因となる物質が次々と放出されるようになります。

これらの物質は、血管を強く締め付けて通り道を狭くしたり、腎臓が尿として捨てるはずの塩分(ナトリウム)を体内に溜め込むように働きかけたりします。

身体の中に塩分と水分が溜まり、さらに血管が狭くなることで、血圧が押し上げられてしまうのです。

②心臓にかかる負担の増加

体重が増えるということは、それだけ血液を届けなければならない身体の範囲が広がることを意味します。

増えた組織の隅々にまで、酸素や栄養をたっぷり含んだ血液を行き渡らせるために、心臓はより過酷な労働を強いられます。心臓は、一度に送り出す血液の量を増やしたり、心拍数を上げたりして、全身に血液を巡らせようとフル回転します。

このように心臓が必死に血液を押し出すことで、血管の壁には常に強い圧力がかかるようになります。この状態が休みなく続くことで、血管はダメージを受け続け、慢性的な高血圧へとつながっていくのです。

高血圧の進行

初期:自覚症状のない変化

この時期は、痛みや違和感を全く感じることがありません。

しかし、血管の内側には常に高い圧力がかかり続けています。

血管はこの強い力によって内壁が引き伸ばされ、破裂してしまわないように自らを守ろうと反応します。

具体的には、血管の壁を構成する組織を少しずつ厚くし、内側からの圧力に対抗できるような構造へと作り替え始めます。この段階ではまだ血管の柔軟性は保たれていますが、目に見えないところで負担が蓄積されています。

中期:「動脈硬化」の進行

長年にわたって高い圧力を受け続けると、血管の壁はさらに厚く、そして密度が高くなっていきます。

通常、健康な血管は血液が送り出されるたびに膨らんだり縮んだりするしなやかな弾力を持っていますが、壁が厚く作り替えられることでその柔軟性が失われます。これが動脈硬化と呼ばれる状態です。

柔軟性を失った血管は、硬く、そしてもろい組織へと変化し、血液の拍動を吸収できなくなります。これにより、血液が流れる際の抵抗がさらに強まり、血圧の数値をさらに押し上げるという悪循環が定着し始めます。

後期:通り道の目詰まりと悪循環の加速

高血圧の状態が続くと、血管はこの過度な圧力によって壁が破れてしまうのを防ぐため壁の組織を厚くします。

しかし、これと並行して、内側の壁には高い圧力によるミクロの傷が無数につきます。

この傷口には、血液中を流れるコレステロールなどの脂質が入り込みやすくなります。

入り込んだ脂質は血管の壁の中で蓄積され、盛り上がった塊を形成します。

これにより血管の内側が内向きに膨らみ、血液の通り道が極端に狭くなります。

身体は、狭くなった隙間にこれまでと同じ量の血液を通そうとして、より一層高い圧力をかけて血液を送り出すようになります。

この段階になると血管の壁は限界に近づき、いつ詰まったり破れたりしてもおかしくないほど劣化が進んでいます。

最終的には、狭くなった通り道が完全に塞がって血流が止まるか、もろくなった壁が圧力に耐えきれずに破裂します。

これが脳で起きれば脳梗塞や脳出血、心臓で起きれば心筋梗塞など、命に関わる重大な事態を招くことになります。

高血圧の合併症

・脳の合併症

脳の血管は非常に細くデリケートなため、高い圧力がかかり続けると「詰まる」または「破れる」リスクが非常に高まります。

脳梗塞(のうこうそく)

動脈硬化で狭くなった血管に血栓が詰まり、酸素や栄養が途絶えて脳細胞が死滅する病気です。 場所により、半身の麻痺や言語障害などの重い後遺症が残るリスクがあります。

脳出血(のうしゅっけつ)

高血圧で脆くなった脳内の細い血管が、圧力に耐えきれず直接破裂して出血する病気です。 溢れ出た血液が周囲の脳組織を圧迫・破壊するため、激しい頭痛や意識障害を伴います。

くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)

血管の分岐点にできたコブ(脳動脈瘤)が破裂し、脳を覆う膜の隙間に出血が広がる病気です。 突然の激痛が特徴で、一瞬で命に関わる、あるいは深刻な意識障害を招く非常に危険な状態です。

血管性認知症(けっかんせいにんちしょう)

自覚症状のない小さな脳梗塞や脳出血が繰り返され、脳の神経ネットワークが寸断されることで起こります。 トラブルが起きるたびに、記憶力や意欲、感情の制御といった能力が段階的に低下していきます。

・心臓の合併症

心臓は高い圧力(抵抗)に向かって血液を押し出し続けなければならないため、筋肉が疲弊し、構造自体が変化していきます。

心肥大(しんひだい)

高い圧力に向かって血液を送り出し続けた結果、心臓の筋肉が筋トレをした後のように分厚くなった状態です。 筋肉が厚くなりすぎると、かえって柔軟性が失われて広がりづらくなり、血液を溜める効率が落ちてしまいます。

心不全(しんふぜん)

長年の過重労働で心臓が疲れ果て、全身に十分な血液を送り出せなくなったポンプ機能不全の状態です。 血液が滞ることで肺に水が溜まって息切れが起きたり、足がひどくむくんだりと、全身のあらゆる機能が低下します。

狭心症(きょうしんしょう)・心筋梗塞(しんきんこうそく)

心臓自身を動かすための血管(冠動脈)が、動脈硬化で狭くなったり、完全に詰まったりする病気です。 血液が途絶えると心臓の筋肉が壊死し、激しい胸の痛みと共に心停止を招くこともある、一刻を争う非常に危険な状態です。

心房細動(しんぼうさいどう)

高血圧による負担で心臓の心房(特に左心房)が拡大し、脈がバラバラに乱れる不整脈の一種です。 心臓の中で血液がよどみ、血の塊(血栓)ができやすくなるため、それが脳へ飛んで巨大な脳梗塞を引き起こす最大の原因となります。

・腎臓の合併症

腎臓は細い血管が毛細血管の塊のような臓器であるため、高血圧の影響を最も受けやすい場所の一つです。

腎硬化症(じんこうかしょう)

長期間の血圧負荷によって、腎臓内の細い血管が硬くなり、血液をろ過する効率が落ちてしまう病気です。 腎臓は毛細血管の塊のような臓器であるため、血管が硬くなるとフィルターとしての機能が失われ、老廃物を尿として排出できなくなります。

慢性腎臓病(CKD)

腎臓の働きが健康な時の60%未満に低下するか、尿にタンパクが漏れ出す状態が続くことの総称です。 自覚症状がほぼないまま進行し、一度失われた腎機能は元の健康な状態に戻ることが難しいため、早期発見と血圧管理が極めて重要になります。

尿毒症(にょうどくしょう)

腎臓の機能が極限まで低下し、本来排出されるべき毒素や老廃物が全身に溜まってしまう末期的な状態です。 食欲不振や吐き気、意識障害などの深刻な症状が現れ、生命を維持するために機械で血液を掃除する「人工透析」や「腎移植」が必要不可欠となります。

・その他の重要な合併症

血管は全身を巡っているため、ダメージは全身に及びます。

大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)・大動脈解離(だいどうみゃくかいり)

体内で最も太い大動脈が圧力でコブのように膨らんだり(瘤)、三層構造の壁が内側から裂けたり(解離)する病態です。 自覚症状がないまま突然破裂することがあり、その場合は一瞬で命に関わる、非常に緊急性の高い状態です。

眼底出血(がんていしゅっけつ)

目の奥(網膜)を通る非常に細い血管が、高い圧力に耐えきれず破裂して出血する状態です。 視界に影ができたり視力が低下したりするだけでなく、放置すると網膜剥離や硝子体出血を引き起こし、最悪の場合は失明に至る恐れもあります。

閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)

足へ血液を送る血管が動脈硬化で狭くなり、血流が不足することで足の冷えや痛みが生じる病気です。 「歩くと痛むが休むと治まる」という症状から始まり、進行すると足先が黒く腐ってしまう(壊死)ため、早期の治療が必要です。