西新宿セルフライフ内科クリニック

糖尿病

糖尿病とは

糖尿病とは、血液中に含まれる糖(グルコース)の濃度、すなわち血糖値が慢性的に高い数値を維持してしまう疾患です。

通常、食事から摂取された糖分は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きによって細胞内へ取り込まれ、生命活動を維持するためのエネルギー源として利用されます。このインスリンは、血液中の糖を細胞に受け渡す際の「橋渡し」のような重要な役割を担っており、健康な状態であればインスリンが適切に働くことで血糖値は一定の範囲内に保たれています。

しかし、糖尿病を発症すると、このインスリンの分泌量が不足したり、働きが鈍くなったりすることで、糖が細胞へスムーズに運ばれず、血液中に糖が過剰に留まる状態が続きます。そして高血糖状態が持続すると、血液の粘性が高まり、全身を巡る血管の内壁に持続的な負荷を与え続けることになります。

微小な血管から大きな血管までが徐々に損傷し、血流障害や血管壁の硬化を招くことが、糖尿病の本質的な危険性です。

この血管へのダメージは全身の臓器に及び、特に腎臓や目、神経といった細い血管が集まる部位に深刻な影響を及ぼします。

糖尿病の大きな特徴は、発症からかなりの期間にわたって自覚症状が乏しいことです。

血管の損傷が静かに進んでいる間も痛みや違和感を感じることはほとんどありません。

喉の渇きや多尿、倦怠感、急激な体重減少といった症状が自覚できるほどに現れた際には、すでに病状が進行し、合併症のリスクが高まっていることが少なくありません。

そのため、受診の判断においては自覚症状の有無ではなく、客観的な検査数値を重視する必要があります。

健康診断における空腹時血糖値や、過去1〜2ヶ月間の血糖状態を反映する指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の数値が、診断基準において「糖尿病型」とされる値はもちろん、糖尿病と診断される一歩手前の『境界型(予備軍)』と判定された段階であっても、早期に医療機関を受診することが重要です。

早期に適切な治療や生活の改善介入を行うことで、血管の損傷を食い止め、将来的な合併症を防ぐことが可能となります。

健康診断の結果で数値の指摘を受けた方や喉が異常に渇く、尿の回数が増えたといった体調の変化を感じる方は、症状が深刻になる前に、早めに専門の医師にご相談ください。

糖尿病の種類

1型糖尿病

生活習慣とは関係なく、膵臓にあるインスリンを出す細胞が壊れてしまうことで発症します。

主な原因は自己免疫の異常やウイルス感染などがきっかけになると考えられており、自分の免疫細胞が誤って自分の細胞を攻撃してしまうことで起こります。

ある日突然、急激に症状が現れることが多く、体内のインスリンが極端に不足、あるいは全くなくなってしまうのが特徴です。

主に子供や若年層に多く見られますが、大人になってからゆっくりと進行することもあります。

2型糖尿病

日本人の糖尿病患者の約9割以上を占める最も一般的なタイプです。2型糖尿病は、遺伝的な体質(家族に糖尿病の人がいるなど)の影響が強く、そこに過食、運動不足、肥満、加齢といった生活習慣が重なることで発症します。インスリンの分泌量が減ったり、効きが悪くなったりすることで、数年かけてゆっくりと進行するため、初期には自覚症状がほとんどありません。40歳以降の中高年に多いですが、近年はライフスタイルの変化により若年層での発症も増加しています。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて発見される、まだ糖尿病には至っていない糖代謝の異常を指します。

妊娠中に胎盤から分泌されるホルモンが、インスリンの働きを妨げてしまうことが主な原因です。お母さんの高血糖は、赤ちゃんの体格が大きくなりすぎるなどの母子双方のリスクにつながるため、厳格な管理が求められます。多くの場合、出産後には数値が改善しますが、将来的に本当の糖尿病に移行しやすい体質であることが分かっているため、産後の継続的なチェックが欠かせません

その他の原因による糖尿病

他の病気や治療で使っている薬がきっかけとなって、二次的に血糖値が上がってしまうケースがあります。主に以下の4つの原因に分けられます。

膵臓(すいぞう)のトラブル

インスリンを作る「工場」である膵臓そのものがダメージを受けるケースです。

お酒の飲み過ぎなどによる炎症や、膵臓がん、あるいは手術で膵臓を切り取ったことによって、インスリンを作る能力が低下することで発症します。

血糖値を上げるホルモンの乱れ

体内には血糖値を下げるインスリンとは反対に、血糖値を上げる働きをするホルモンがいくつか存在します。

喉にある甲状腺の不調や、成長に関わるホルモンの乱れなどが原因で、この「上げる命令」が過剰に出続けてしまうと、インスリンの力が追いつかなくなり血糖値が上昇します。

お薬による副作用

他の病気を治すための薬が、予期せず血糖値を上げてしまうことがあります。

特に、炎症やアレルギーを抑える「ステロイド薬」などは、肝臓での糖の産生を増やしたり、インスリンの効き目を弱めたりする性質があるため、治療中に血糖値が上がってしまうことがあります。

遺伝子の異常

ごく稀に、親から受け継いだ「身体の設計図(遺伝子)」の中に、インスリンを作る工程を邪魔してしまう情報が含まれていることがあります。これは生活習慣とは一切関係なく、10代や20代といった非常に若い頃から発症するのが特徴です。

糖尿病はどのタイプであっても、放置すれば全身の血管にダメージを与え、深刻な合併症を招くリスクがあります。ご自身のタイプを正しく理解し、それに基づいた適切な治療を行うことが何より重要です。

糖尿病の原因

糖尿病が発症する原因は、血液中の糖分を調節するホルモン「インスリン」がうまく働かなくなることにあります。

その背景には、大きく分けて以下の4つの要因があります。

1. 体質(遺伝)の影響

家族に糖尿病の人がいる場合、生まれつき「インスリンを出す力が弱い体質」や「インスリンが効きにくい体質」を受け継いでいることがあります。

こうした体質的な土台があるところに、生活環境の変化が加わることでより発症しやすくなります。

2. 生活習慣による負担

食べ過ぎ・飲み過ぎ

食事や糖分の多い飲料を過剰に摂取すると、血液中の糖を処理するために、胃の裏側にある「膵臓(すいぞう)」から大量のインスリンが分泌されます。

この過度な要求が繰り返されると、膵臓の細胞は常に過密な労働を強いられ、次第に疲弊してインスリンを作る力が弱まります。

さらに、高血糖状態が続くこと自体が膵臓の細胞にダメージを与える「糖毒性」を引き起こし、分泌能力がいっそう低下するという悪循環に陥ります。

このように膵臓の供給能力が低下し、必要なインスリンが不足するため、血糖値が上昇します。

肥満(内臓脂肪の蓄積)

蓄積された内臓脂肪からは、インスリンの働きを妨げる物質が分泌されます。

これにより、膵臓からインスリンが正常に分泌されていても、肝臓や筋肉などの細胞がその指令を適切に受け取れなくなります。この状態では内臓脂肪がインスリンの効果を減弱させるため、血糖値が高止まりします。

運動不足

運動不足により筋肉を動かす機会が減少すると、血液中の糖を細胞内へ取り込む機能が停滞します。また、筋肉量の減少自体が糖を処理する許容量を狭める原因となります。結果として筋肉での糖の取り込みが停滞し、処理が追いつかなくなるため、血糖値が下がりにくくなります。

ストレス・睡眠不足

身体的・精神的な負荷や睡眠不足が続くと、自律神経のバランスが乱れ、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンが分泌されます。これらのホルモンはインスリンの働きを相殺し、血糖値を上昇させる方向に作用します。インスリンの働きを抑えるホルモンが過剰に分泌されるため、血糖値が高い状態で維持されます。

3. 加齢による機能低下

年齢を重ねるにつれて、インスリンを供給する膵臓の細胞機能は自然と衰えていきます。また、加齢による筋肉量の減少(サルコペニア)は、体内における糖の最大の消費場所を失うことを意味します。これにより、インスリンの分泌能力が低下し、さらに筋肉での糖代謝効率も落ちるため、若い頃と同様の生活習慣であっても血糖値が上昇しやすくなります。

糖尿病は、これら「生まれ持った体質」と「生活環境」や「加齢」などが複雑に組み合わさり、身体の糖を処理する能力を超えた時に発症します。どの要因が強く関わっているかは、人によって異なります。

糖尿病の進行

1.予備軍

予備軍は膵臓の代償機能による過剰なインスリン分泌の始まりです。血液中の過剰な糖を処理するために、インスリンを作る工場である膵臓の細胞が、通常よりも多くのインスリンを放出して血糖値を維持しようとします。膵臓に「過剰な製造負荷」がかかっているものの、供給量が需要を満たしているため、検査数値が正常範囲内に留まることも少なくありません。このように膵臓が限界まで補う力を働かせて血糖値を維持しようとするため、本人の自覚がないまま病状が進行していきます。

2.初期

初期はインスリン供給源である膵臓の細胞機能の減退と糖毒性の始まりです。

持続的な過負荷により、インスリンを産生する膵臓の細胞そのものが疲弊し、分泌能力が徐々に低下し始めます。血液中に糖が滞留する「高血糖」の状態が常態化すると、あふれた糖が膵臓や全身の血管を直接攻撃する「糖毒性」が顕在化します。インスリンの供給が需要に追いつかなくなり、糖毒性がさらに膵臓の機能を弱めてしまうため、血糖値の上昇に拍車がかかります。

3.中期

中期は血管内皮障害と重大な合併症の顕在化の始まりです。慢性的かつ持続的な高血糖により、全身の血管の内側の壁(内皮)が損傷し、血管壁が脆くなっていきます。

特に微小血管が密集する「網膜」「腎臓」「末梢神経」に障害が生じ、視力低下や蛋白尿などの「微小血管障害(三大合併症)」がはっきりと現れます。

全身の血管が破壊され、各組織への血流が途絶えるため、臓器が深刻な機能不全に陥ります。

4.末期

末期はインスリンを作る力が完全になくなり、多臓器不全が始まります。

膵臓のインスリン分泌能力がほぼ完全に失われ、医学的に「インスリン枯渇」と呼ばれる状態に至ります。自力の血糖調節機能が完全に消失するため、生命を維持するために外部からインスリン製剤を補充する治療が不可欠となります。

適切な治療介入がなければ、血糖コントロールは完全に破綻します。その先には、人工透析を要する腎不全や足の切断に至る壊疽(えそ)など、日常生活の自立を奪う極めて深刻な事態に陥ってしまいます。

糖尿病の合併症

・神経障害

高血糖によって神経細胞に栄養を送る微細な血管が損傷し、血流が滞ることで起こります。また、糖の代謝異常によって生じる物質が蓄積し、直接神経を傷つけることも原因です。主な症状は足先や手のしびれ、痛み、冷えなどで、進行すると痛みを感じなくなり、怪我や火傷に気づかないまま重症化するリスクがあります。

・網膜症

眼底にある網膜の細い血管が高血糖でダメージを受けて詰まることで発症します。

詰まった血管の代わりに酸素を補おうと新しく作られた血管は非常にもろく、出血や網膜剥離を引き起こします。目のかすみや黒い点が飛ぶ飛蚊症が現れますが、かなり進行するまで自覚症状がないのが特徴です。

・腎症

血液をろ過して尿を作る腎臓内の細い血管(糸球体)が、高血糖によって硬くなり、フィルター機能が壊れることで起こります。

本来は体内に残すべきタンパク質が尿に漏れ出し、最終的には老廃物を排出できなくなります。初期は無症状ですが、進行すると蛋白尿、むくみ、だるさが現れ、重症化すると人工透析が必要になります。

・壊疽

神経障害による感覚の麻痺と、血流障害による組織の修復力低下が重なって起こります。小さな怪我や水虫などから細菌に感染しても、痛みを感じないため放置してしまい、血行不良も重なって組織の壊死が進み、黒く変色します。足の切断に至ることもある深刻な状態です。

・脳血管障害

高血糖が続くことで脳へ送る太い血管の動脈硬化が進み、血管壁が厚く、もろくなることが原因です。これにより脳梗塞や脳出血が起こりやすくなります。主な症状は、身体の片側の麻痺、言葉のもつれ、意識障害などで、命に関わるだけでなく重い後遺症が残ることもあります。

・虚血性心疾患

心臓の筋肉に酸素を送る冠動脈が、高血糖による動脈硬化で狭くなったり詰まったりすることで発症します。胸の痛みや圧迫感が主な症状ですが、糖尿病の方は神経障害の影響で痛みを感じない「無痛性心筋梗塞」を起こすことがあり、早期発見が難しいという危険性があります。