西新宿セルフライフ内科クリニック

動脈硬化

動脈硬化とは

動脈硬化とは、心臓から送り出された血液を全身へ運ぶ「動脈」が、老化やダメージによって厚みを増し、弾力性を失って硬くなってしまった状態を指します。

本来、健康な動脈は新品のゴム管のように優れた弾力を持っており、心臓が血液を送り出す際の強い圧力に合わせて、しなやかに膨らんだり縮んだりすることで血流をスムーズにコントロールしています。

しかし、動脈硬化が進むと、この「血管のしなやかさ」が失われ、まるで古くなってサビついた鉄の管のような、脆くて硬い状態へと変化してしまいます。

この変化が起きる過程には、血管の壁の内側で起きる「ゴミの蓄積」が深く関わっています。

血管の最も内側には「内皮細胞」という薄い膜があり、本来はツルツルとした路面のように血液を滑らかに流す役割を果たしています。

ところが、高血圧による過度な圧力や、喫煙による有害物質、高血糖などが原因でこの内皮が傷つくと、その傷口から血液中の悪玉コレステロール(LDL)が血管の壁の内部へと入り込んでしまいます。

壁の中に入り込んだコレステロールは酸化して変質し、そこに免疫細胞が集まって処理しようとした結果、ドロドロとした塊である「プラーク」が形成されます。

このプラークが溜まっていくと、血管の壁は内側に向かってどんどん盛り上がり、血液の通り道が物理的に狭くなっていきます。

さらに、身体はこのダメージを修復しようとしてカルシウムを送り込むため、血管の壁が石のように硬くなる「石灰化」が進み、血管は完全に柔軟性を失います。

こうなると、高い血圧の衝撃を吸収できなくなり、血管は非常に破れやすく、かつ詰まりやすい「脆いパイプ」と化してしまいます。

動脈硬化の本当の恐ろしさは、この壁の中に溜まった「ドロドロの塊」を包んでいる薄い膜が、血流の刺激などで突然破れてしまうことにあります。

膜が破れると、中から漏れ出した物質を止めようとして血液が急激に固まり、「血栓(けっせん)」という血の塊を作ります。

この血栓が、狭くなっていた血管を一瞬で完全に塞いでしまうのです。

これが心臓の血管で起きれば「心筋梗塞」、脳の血管で起きれば「脳梗塞」を引き起こします。

血管が7割から8割ほど塞がるまで痛みなどの自覚症状が一切出ないため、ある日突然、致命的な事態を招きます。

動脈硬化の原因

動脈硬化は、加齢に伴う生理的な変化としても現れますが、現代社会においては不摂生な生活習慣がその進行を著しく加速させる主要因となっています。

血管の健康を損なう原因は、主に4つあります。

脂質異常症

血液中の低比重リポたんぱく(LDL、いわゆる悪玉コレステロール)が過剰な状態になると、血管内腔の隙間から内膜へと入り込みやすくなります。

これが蓄積し、酸化されることでプラークが形成され、物理的に血管を狭める直接的な原因となります。

高血圧

血管に物理的な負荷をかける高血圧も動脈硬化の原因になります。血液が血管壁に対して常に高い圧力をかけ続けることで、内皮細胞が慢性的な機械的ストレスを受け、血管壁は自らを保護するために肥大し、柔軟性を失って硬化していきます。これは、高圧に耐えようとして血管が構造的に作り替えられてしまう反応です。

喫煙

喫煙による化学的ダメージも深刻です。煙草に含まれるニコチンや一酸化炭素といった有害成分は、交感神経を刺激して血管を急激に収縮させるだけでなく、血管の最深部にある内皮細胞を直接的に攻撃して傷つけます。

この損傷部位は、いわば「血管の弱点」となり、脂質の蓄積や血栓の形成を招く原因となります。

高血糖(糖尿病)

高血糖(糖尿病)も動脈硬化の重要な因子です。

血液中の糖濃度が慢性的に高い状態が続くと、血管壁を構成するタンパク質と糖が結合する「糖化」という現象が起き、血管壁そのものが非常に脆くなります。

加えて、高血糖は微小な炎症を誘発するため、全身の血管の老化を進行させる原因となります。

動脈硬化の進行

初期

動脈の壁は、内側から「内膜」「中膜」「外膜」の三層で構成されています。

最も内側にある「内皮細胞」は、血液が固まらないように調整したり、血管のしなやかさを保ったりする重要なバリア機能を担っています。

しかし、高血圧や喫煙、高血糖などのストレスが加わると、この内皮細胞が傷つき、機能が低下します。すると、本来は通り抜けられないはずの血液中の悪玉コレステロール(LDL)が、血管の壁の内部(内膜の下)へと染み込んでいきます。これが動脈硬化の初期段階です。

中期

壁の内部に入り込んだコレステロールは酸化して有害な物質に変わり、それを処理するために免疫細胞が集まります。

この死滅した細胞と脂質が混ざり合い、ドロドロとした塊である「プラーク」が作られます。

このプラークが大きくなるにつれて、血管の壁は内側に向かって厚く盛り上がり、血液の通り道が物理的に狭くなっていきます。

同時に、血管のしなやかさを支える組織が壊れ、カルシウムが沈着して石のように硬くなる「石灰化」が進みます。

この段階でも、血液の流れが完全に止まっていない限り、身体に痛みなどの異変を感じることはありません。

後期

最終段階では、血管壁に溜まったプラークが限界を迎えます。

プラークを覆っている薄い膜が血流の圧力などで破れると、中身が露出します。

身体はこれを「大きな怪我」と判断し、そこを塞ごうと血液を急激に固めます。

これが「血栓(けっせん)」という大きな血の塊です。

この血栓が、既に狭くなっている血管を一瞬で完全に塞いでしまうと、その先に酸素や栄養が届かなくなります。

その結果、その先の組織や臓器の細胞が死滅する「梗塞(こうそく)」の状態に陥ります。この「梗塞」が、心臓で起きれば心筋梗塞、脳で起きれば脳梗塞となり、命に関わる激しい症状が突如として現れるのです。

動脈硬化の合併症

動脈硬化自体は、直接的な死因として診断書に記載されることは稀ですが、進行した結果として引き起こされる「合併症」は、生命に直結する深刻な事態を招きます。

脳血管疾患(脳卒中)

脳血流を維持する血管で動脈硬化が進行すると、大きく分けて2つの深刻な事態が起こります。

血管が完全に閉塞し、脳組織が酸素欠乏によって死滅する「脳梗塞」、そして脆くなった血管壁が血圧に耐えきれず破裂する「脳出血」です。

これらは、一瞬にして意識障害、言語障害、運動麻痺といった重篤な後遺症を残すか、あるいは生命を奪う直接的な原因となります。

心疾患(心筋梗塞・狭心症)

心臓自体に酸素と栄養を送る専用の血管を「冠動脈」と呼びます。

この冠動脈で硬化が進み、通り道が狭まって一時的に心筋が酸素不足に陥る状態が「狭心症」です。

さらに、血栓によって血管が完全に遮断されると「心筋梗塞」となり、心筋の細胞が壊死し始めます。これは激しい胸痛を伴うだけでなく、致命的な不整脈や心停止を誘発する極めて危険な状態です。

閉塞性(へいそくせい)動脈硬化症

主に足の血管(下肢動脈)で動脈硬化が進行する病態です。

初期には足の冷えやしびれを感じ、進行すると「一定距離を歩くと痛みで足が止まるが、休むと再び歩ける」という間欠性跛行(かんけつせいはこう)が現れます。

さらに悪化して血流が極端に途絶えると、足の指先などの組織が腐る「壊死(えし)」に至り、最悪の場合は切断を余儀なくされることもあります。

大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)

全身で最も太い血管である「大動脈」の壁が動脈硬化によって弾力性を失い、風船のように膨らんでしまった状態を指します。

このコブ(瘤)自体に痛みはありませんが、限界を超えて破裂すると、体内でコントロール不可能な大出血を引き起こします。破裂した際の致死率は極めて高く、事前の発見と管理が極めて重要な疾患です。