
「病院に行くほどではないけど、なんとなく調子が悪い」
外来で患者さんとお話ししていると、こんな言葉をとてもよく耳にします。熱もない、どこかが痛いわけでもない。でも、だるい、疲れが取れない、なんとなく気分が晴れない――。そんな「なんとなく不調」を抱えたまま、我慢して過ごしている方は本当に多いです。
今回は、看護師の立場から、この「なんとなく不調」とどう向き合えばいいのか、お話ししたいと思います。
「なんとなく」の中身を分解してみる
「なんとなく不調」という言葉は便利なようで、実はいろいろな症状をひとまとめにしてしまっている場合がほとんどです。
■朝、目覚めてもスッキリしない
■日中、集中力が続かない
■理由もなくイライラする、または落ち込みやすい
■肩や首のこりが取れない
■食欲がいつもより出ない、または食べ過ぎてしまう
■眠りが浅い、途中で目が覚める
■胃のあたりが重い、お腹の調子がすっきりしない
■些細なことでため息が増えた
こうして並べてみると、「なんとなく不調」の正体は、意外と具体的な体と心のサインの集合体であることが分かります。
一つひとつは軽い症状に見えても、いくつも重なっている場合は、体が発しているSOSのサインかもしれません。
なぜ「なんとなく」で片付けてしまうのか
働き世代の方は特に、日々の仕事や家庭の予定に追われ、自分の不調に向き合う時間を後回しにしがちです。
「これくらい皆そうだろう」「休めば治るはず」「病院に行くほどの症状じゃない」――そう思ってしまう気持ち、とてもよく分かります。
私自身も、看護師という仕事柄、自分の不調を後回しにしてしまうことがあります。
ただ、ここで少し立ち止まって考えていただきたいのは、「なんとなく不調」は体からの立派な情報だということです。
痛みや発熱のようにはっきりした症状ではなくても、自律神経の乱れ、睡眠不足の蓄積、ストレスの積み重ね、隠れた栄養不足や貧血など、何らかの理由があって体はサインを出しています。
放置するとどうなるか
「なんとなく不調」をそのままにしていると、多くの場合、じわじわと悪化していきます。
自律神経の乱れが続くと、めまいや動悸、頭痛といった、より分かりやすい症状として現れることがあります。慢性的な疲労は免疫力の低下につながり、風邪をひきやすくなったり、治りが遅くなったりすることも。また、気分の落ち込みが長引くと、仕事や人間関係にも影響が出てくることがあります。
つまり「なんとなく不調」は、放っておくと「はっきりした不調」に育ってしまう可能性がある、いわば早期のサインなのです。逆に言えば、この段階で気づいて対処できれば、大きな体調不良を防げる可能性が高いということでもあります。
セルフチェックのすすめ
まずは、自分の不調を「なんとなく」のままにせず、少し言語化してみることをおすすめします。
□いつから続いているか(数日?数週間?それ以上?)
□症状に波はあるか、それとも常に続いているか
□睡眠、食事、運動といった生活習慣に変化はなかったか
□仕事やプライベートで、思い当たるストレスの原因はないか
□症状によって、日常生活にどのくらい支障が出ているか
こうして書き出してみると、「実はここ最近、寝る時間が遅くなっていた」「大きなプロジェクトが重なっていた」など、意外と原因に心当たりがあることも多いです。
原因が分かれば、対処の糸口も見えてきます。
受診の目安
セルフケアで様子を見ても大丈夫な場合と、一度受診をおすすめしたい場合があります。
以下のような場合は、遠慮せず医療機関に相談してください。
■不調が2週間以上続いている
■症状が徐々に強くなっている
■十分な休養をとっても改善しない
■体重の急な増減がある
■日常生活(仕事、家事、人付き合いなど)に明らかな支障が出ている
「これくらいで受診していいのかな」と迷う方も多いのですが、迷った時点で一度相談していただいて大丈夫です。血液検査などで、隠れた貧血や甲状腺の異常、栄養状態の偏りが見つかることも珍しくありません。
「なんとなく不調」の背景に、体の中で起きている変化が隠れていることもあるのです。
実際にあった、「なんとなく不調」からの気づき
外来では、こんな例をよく目にします。
30代の会社員の方は、「特に体調が悪いわけではないけれど、以前より疲れやすくなった気がする」という理由で受診されました。
詳しくお話を伺うと、ここ数か月、残業が増えて就寝時間が1時間以上遅くなっていたこと、昼食を抜く日が増えていたことが分かりました。
血液検査では軽度の貧血が見つかり、生活習慣の見直しと鉄分の補給で、数か月後には「以前のような疲れやすさがなくなった」とお話しされていました。
また別の方は、「なんとなく気分が沈みがちで、休日も出かける気力が湧かない」と相談にいらっしゃいました。話を伺う中で、繁忙期が続いていたこと、休日も仕事のことが頭から離れなかったことが見えてきました。この方の場合は、明確な病気というよりも、心身の疲労が蓄積したサインでした。
休養の取り方や、オンオフの切り替え方について一緒に考えることで、少しずつ気持ちが軽くなっていったそうです。
このように、「なんとなく不調」の背景には、生活習慣の変化や、気づかないうちに積み重なったストレスが隠れていることが多くあります。
自分では「いつも通り」のつもりでも、体は正直に反応しているのです。
周囲の人の変化にも目を向けてみる
「なんとなく不調」は、自分自身だけでなく、家族や同僚など周囲の人にも当てはまることがあります。
「最近元気がないな」「口数が減った気がする」といった小さな変化に気づいたときは、さりげなく声をかけてみることも大切です。
本人が「なんとなく不調」を自覚していても、なかなか言い出せずにいるケースは少なくありません。
周囲からの「大丈夫?」のひと言が、受診や休養のきっかけになることもあります。
もちろん、無理に詮索したり、心配しすぎたりする必要はありません。
ただ、「いつもと違うな」という感覚を大事にすることは、本人にとっても周囲にとっても、大きな不調を防ぐ助けになります。
今日からできる小さなセルフケア
すぐに受診とまではいかなくても、日常の中でできることもたくさんあります。
まずは睡眠時間を見直すこと。理想は7時間前後と言われていますが、時間だけでなく、寝る前のスマホ使用を控える、就寝・起床の時間をできるだけ揃えるといった「質」への意識も大切です。
食事では、忙しいとつい後回しになりがちなたんぱく質やビタミン類を意識してみてください。
コンビニで選ぶ場合も、おにぎりだけでなく、サラダチキンやゆで卵を一品足すだけで変わってきます。
軽い運動も効果的です。
激しい運動でなくても、通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うといった小さな積み重ねで十分です。
そして何より、「不調を我慢することが偉い」わけではない、ということを心に留めておいてください。
おわりに
「なんとなく不調」は、多くの方が経験する、とても身近な悩みです。
だからこそ、「みんなそうだから」と流されがちですが、体からのサインに耳を傾けることは、これからも元気に働き、過ごしていくためにとても大切なことです。
少しでも「あれ、おかしいな」と感じたら、我慢せずに、まずは生活習慣を振り返ってみてください。
それでも改善しない、あるいは不安な場合は、どうぞ気軽にクリニックへご相談ください。
私たちスタッフ一同、皆さんの「なんとなく」に、しっかり向き合いたいと思っています。
西新宿セルフライフ内科クリニック 看護師 平田
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